猜疑連鎖 / 戦争はなぜなくならないのか
※この記事には小説「三体」のネタバレを含みます。
中国人作家の本は、日本ではあまり売れなさそうだが、この本は日本でも13万部以上売れているそうだ。
ちなみに本国では数千万部売れているそう。
三体の肝となる考えに猜疑連鎖という物が出てくる。
これは、この小説の重要なキーワードの一つであるが、実際のところ、この言葉を聞いただけではよくわからないといったところだ。
ネタバレをすると、
猜疑連鎖は、宇宙空間のような互いにコミュニケートできない状況において、互いに相手を攻撃できる手段を持っている場合、殺し合ってしまうというものだ。
この猜疑連鎖は、宇宙空間における生命体の行動原理となっているというのが、小説三体の肝になる考えだ。
そして、猜疑連鎖は人間の戦争が発生する原理にも通用するのではないかと思ったというのが、この記事で言いたいことだ。
ちなみに、猜疑連鎖は、日本語ではあまり使われないらしく、調べてもあまり出てこない。
猜疑連鎖は、新しい考えというわけではなく、まさにゲーム理論のことだ。
ゲーム理論は、お互いの行動が影響を与える状況における意思決定を数学的に表した理論だ。
人間の戦争にどう、適用できるかと思ったかというと、昔の時代、つまり、今のように、インターネットや電話のような通信手段がなく、早い移動手段もない時代では、大国同士のコミュニーケーションは大変だっただろう。
わざわざ使者を送って、自国の意思を伝えるという感じだった。
そのようなコミュニーケーションが難しい状況では、猜疑連鎖により、互いが戦争を起こしてしまう。
たとえ、戦争が両者にとって費用と労力のかかるものであったとしてもだ。
今の時代は、コミュニーケーションの手段は、昔よりも遥かに早い。だから、互いにコミュニケートできる状況下において、意思決定することができるため、即戦争というわけにはならない。また、核兵器という、使用したら圧倒的に被害が大きくなってしまうものが存在するおかげもある。そんなわけで大国同士の大戦争は免れているというのが現状のようだ。
逆に考えると、コミュニーケーションが途絶えた状況になってしまうと、戦争への道が開かれてきてしまうということも意味する。
これは、個人間のトラブルにもつながっていて、マンションの隣人トラブルでは、互いに面識があったほうがトラブル回避できるため、挨拶のお菓子を持っていったりする。男同士の喧嘩も、相手のことをよく知らないうちはいがみ合っていたけど、一回話してみると意気投合するというのもよくある話だ。
そんなわけで、小説「三体」に出てくる猜疑連鎖を、現実世界につなげてみました。
それにしてもゲーム理論という思想の裾の広さに感動する。