僕らの行く道

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【本の紹介】9プリンシプルズ / 伊藤穰一 ジェフ・ハウ

伊藤穰一さんの書いた本格的著作ということで読んでみた。伊藤さんは、学位をもたずしてMITメディアラボの所長になったという異色の経歴の持ち主だ。茂木健一郎さんは、伊藤さんを天才と呼んでいた。僕は伊藤さんには以前から注目していたので、本を読んでみることにしたのだ。

 

読んだ感想としては、非常に示唆にとんでいてウィットな表現が散りばめられた本だった。「はじめに」でも書かれているように、「9つの原理」全体を通して主張の根底にあるのは 非対称性 複雑性 不確実性の3つだ。

 

伊藤さんのブログには何度か訪れたことがあるが、正直いって読みやすい文章を書く人ではないという印象だった。ブログはもともと英語でかかれていてそれを本人または他の人が翻訳しているようだ。思考と専門用語についていけないというのもあると思うがあまり一般人にわかりやすい文章を書くタイプのひとではなさそうだなとは思っていた。

 

しかしこの本は以外に読みやすい。ITの知識がないと難しい部分はあるが、主張と根拠がまとまっているので理解し易いと感じた。文章の雰囲気としてはドーキンスの「利己的な遺伝子」のよう。知的なウィットに富んでいる。

 

9つの原理の根拠に一貫しているのは非対称性 複雑性 不確実性の3つだ。アリは、個別では単純な行動原理で動いているのに集団になると知的な生物のように振る舞う。アリに喩えられるように、インターネットが発達して個人が容易に情報をやり取りできるようになった現代では、技術革新は一部の天才ではなく、複雑性(カオス)からもたらされる。汎用人工知能(強いAI)が有名大学の研究室や大企業ではなく、学生寮の一室で密かに生み出される可能性もあるということだ。このようにどこで何が起こってもおかしくない現代では、固定観念にとらわれることのない柔軟性をもつことが重要だと書かれている。

 

この本に書かれている内容は非常に重要な示唆に富んでいるものの、話が大きすぎて実際に自分に活かせる部分は少ないと感じる。だが、自分にできることが少なくてもこの世界の加速度を減少させることにはつながらないことに気付く。私たち個人の数メートルの範囲内で起こるささいな出来事が複雑性を生み出し、全体を加速させていくから。

 

9プリンシプルズ 加速する未来で勝ち残るために (早川書房)