地図とコンパス

人はときに美しいと思える瞬間に出会うこともあります。人生の地図とコンパスをつくっていきましょう。

【本の紹介】コンビニ人間 / 村田沙耶香

最近、村田さんの著作にハマっている。

とても読みやすいナチュラルな文体、社会に違和感を抱く主人公。そしてクレイジー。

今まで、最近の作家さんの本は敬遠して読んでこなかったが、ちゃんと現代の日本文学は面白いんだな、というのがわかってよかった。

 

コンビニ人間」。

村田さんは太宰治著の「人間失格」に影響を受けてこの本を書いているんだろうなと感じた。だから、「人間失格」にドンピシャで影響を受けた僕にとって、「コンビニ人間」が面白くないはずがない。

 

主人公は発達障害だ、と言っている書評をみかけた。僕は、この本を障害者が主人公の本なんだという先入観をもって読むのはよくないと思う。世間が「普通」と呼んでいることに主人公が疑問をもつ理由を、主人公が障害者だからという点に求めるのは浅はかだ。

みんながそうしているから、それが常識だから、という価値観で多数派が少数派を排除する構造は差別の始まりだ。「普通」に疑問をもって、異質にも共感できる客観的な視点をもつことは、社会を住みやすい場所にするためにはとても重要な事だ。この本は、社会には、客観性をもたず、知らず知らずのうちに少数派という理由で異質を排除しようとする人間があまりにも多いことを訴えている。

 

僕がこのような社会への違和感を抱えてしまう人の生きづらさを描いた本を読んで思うのは、本を読んだ人が「普通」の普通でなさ、に気づき、他者にもっと寛容になってくれたらいいのにということだ。だから、主人公は発達障害サイコパスという設定だからこんなヘンテコなストーリーなんだという先入観をもって読んでほしくないのだ。主人公、「古倉恵子」はどこにでもいる、だれにでもいる。白羽はただのクズ人間ではなく、確かに彼の論理は正しいのだ。そう思ってみんなが読んでくれたら社会はもう少し寛容になれるはずだ。

 

コンビニ人間