キヨシローのスゴさ / 宝くじは買わない RCサクセション
先日、車を運転している時にRCサクセションの「宝くじは買わない」を聴いて、忌野清志郎さんがなぜあれほどまでに人々に支持されるようになったのかわかった気がしたので書き留めてみる。
”「宝くじは買わない」(たからくじはかわない)は、RCサクセションのデビューシングル。1970年3月5日発売。発売元は東芝音工。
作詞:忌野清志郎 、作曲:肝沢幅一” 宝くじは買わない - Wikipedia
芸術作品を要約するなんて作品を壊してしまうようでおこがましいが、この曲の歌詞を一言で要約すると、
「僕は宝くじは買わない。だって僕にはお金で買えない恋人がいて、これ以上ないくらい幸せだから」
となる。
僕がこの曲のどこをすごいとおもったかというと、
「『愛はお金で買えない』という古来から人々が口にする言葉をもとに歌詞をつくり、お金がすべてという価値観への批判を含みながら、究極のラブソングでもあり、また軽快なリズムにのせて『今より幸せになれるはずがない』と断言してしまう純粋無垢で愛される歌い手をユーモラスに表出させている」
ところである。
宝くじを買う人、というのは夢をみて買っているわけで、けして生活費を稼ぐために買っているわけではない。宝くじを買う、という行為は、お金があれば幸せになれる、という価値観があることを前提としている。忌野清志郎はその本質を突き、お金がすべてという価値観への懐疑を提供している。
また同時に、「今より幸せになれるはずがない」と断言する歌い手をどこか喜劇っぽく描くことにより「愛はお金では買えない」という言葉への懐疑を示すことにも成功している。
そして、この曲を当時(60年代〜70年代)の若者の”舞台”であった四畳半のアパートの一室で恋人に向けて弾き語りをすればラブソングにもなるのである。
この曲はデビュー曲とは思えない程の完成度をもっており、短い歌詞の中に、その後活動を終えるまで褪せることのない忌野清志郎の魅力がすでにいっぱいにつまっている。
何気なく聴いていれば、ただのフォークソングに過ぎないが、よくきけば様々な思想をのせた驚くほど完成度の高い曲であることがわかる。
こんな歌詞を作ってしまう忌野清志郎はやはり天才である。